NEON
GENESIS
EVANGELION

EPISODE:1
            ANGEL ATTACK

























<ネルフ本部・セントラルドグマB20>

「おっかしいなぁ、確かこの道の筈よねぇ?」

僕の右後ろで紙を持ったミサトさんがつぶやく。

【やっぱり迷ったんだ…まさしく原作通りだよ…】

因みに僕はシンジとは違いパンフレットは読んでいない。

【思ったより重要な事は書いてなかったからな…『極秘』の割には知ってる事ばっかりだったしね】

ゴウン

CAUNTION、R−015と書かれた重厚な扉が開き、気圧の差に僕達に風が吹き付ける。

【…アレってまさかCAUTION(危険)の間違いじゃないよね…だとしたらネルフって…】

僕がそんな事を考えていると、ミサトさんが迷ったのをごまかそうと話題を変える。

「あ、これだからスカート履きづらいのよねここ…しっかしリツコはどぉこ行っちゃったのかしら?ごめんね、まだ慣れてなくて」

そう言ってミサトさんが謝る。

【はぁ、しょうがない】

「ちょっとその地図見せてもらえますか?」

振り向いてミサトさんに言う。

「え、いいけど…わかる?」

そう言うミサトさんから地図を受け取り見てみるが…

【何これ…地図? これじゃどこが通路だか分からんよ。大体マーキングしてある所が目的地とトイレだけって、どういうことですかミサトさん…しかも『この辺!!』って…せめて入り口から目的地までの順路を線で書いといてくださいよ…はぁ、ダメだこれじゃ】

「地図は諦めましょう」

そう言って地図を折りたたみ、ズボンのポケットに入れる。

「え?ちょ、ちょっとシンジ君?」

僕の行動を見てミサトさんが驚きの声を上げる。

「大丈夫ですよ、『システムは利用するためにある』んですから」

そう言って僕はミサトさんに微笑んだ。






『技術局一課・E計画担当の、赤木リツコ博士…赤木リツコ博士。至急、作戦部第一課、葛城ミサト一尉までご連絡下さい』

何本ものパイプが、ピンク色の水の入ったプールの様な所へ繋がっている場所。

「クウキ」と書かれたボンベと、足ひれの置かれた場所へ、そのプールからウェットスーツを着た女性が上がる。

「呆れた…」

アナウンスを聞いて、そう言いながらウェットスーツを脱ぐ女性。

中にはさらに水着を着ている。

「また迷ったのね」

水中ゴーグルを取ってつぶやく金髪の女性こそ、赤城リツコその人だった。






カチ カチ チーン

No.55 ELEVATOR ここは『8−27』です

と書かれた表示が『8−28』に変わる。

音と共に扉が開き、すぐ外にいた金髪の白衣を着た女性に、ミサトさんが驚く。

「!!うえぇ…あ、あらリツコ…」

そして、開いた扉から僕達のいるエレベーターに「水着に白衣」という、ちょっと奇妙だけど何となくセクシーなリツコさんが乗り込む。

「……」

そのプレッシャーに後ずさるミサトさん。

閉まる扉。

「何やってたの葛城一尉? 人手も無ければ、時間も無いのよ?」

リツコさんがミサトさんに静かに告げる。

「えへへ、ゴメン!」

ミサトさんが片手を上げてウインクしながら謝る。

「ふぅ〜」

そんなミサトさんの態度に思わずため息を吐くリツコさん。

そしてリツコさんが僕の方を見る。

「例の男の子ね?」

リツコさんの言葉にミサトさんもこちらを見て言う。

「そう、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン」

【サードチルドレン…】

ミサトさんの言葉を聞いて、リツコさんが微かに表情を崩す。

「よろしくね」

「えぇ、こちらこそ…赤木リツコ博士」

そう言って微笑む僕に、リツコさんが怪訝な表情をする。

【あれ? 何か不味い事言ったかな?】

「…なぜ私の名前を知っているの?」

やや鋭い目でリツコさんが僕を見てくる。

【あぁ、何だそう言うことか…】

「それは先程、ミサトさんが『あら、リツコ』って言ってたので…放送で呼び出されてた赤木博士だと思ったんですよ…お気を悪くしたなら謝ります、ごめんなさい」

そう言って頭を下げる。

「あら、そうだったの…別に謝らなくてもいいわ。私の方こそ変に疑っちゃって、ごめんなさいね」

僕が謝るのを見て、今度はリツコさんが謝る。

頭は下げなかったけど、表情はさっきより柔らかくなっていた。

【リツコさんか…僕は結構好きなんだよな、この人。…いや、猫好きだからってワケじゃないけど…でも、ゲンドウの事が好きで関係とか持ってるんだよなぁ…その上、金髪でヘビースモーカーだし…はぁ、高校生の時のリツコさんだったら可愛かったのに…】

「どうかした?」

そんな事を考えいる間、リツコさんの顔をじっと見つめていたらしい。

「いえ、えっと…綺麗な人だなって」

ちょっとびっくりしつつも誤魔化す僕。

【まぁ、嘘じゃないけど…】

「そう、ありがと」

リツコさんはそう言って微笑んだ。

「何、あたしの時はなぁ〜んにも言わなかったのに…もしかしてシンジ君、リツコに惚れちゃった?」

ミサトさんが原作ではお馴染みの例のテンションで僕をからかおうとする。

「何言ってるんですか…違いますよ」

ちょっと脱力しつつ半眼で答える。

「またまたぁ、隠したって無駄よ。お姉さんにはお見通しなんだから」

「……」

【ミサトさん…今は緊急事態でしょう、もっと危機感持ってくださいよ】

「ミサト…冗談はやめなさい。今は非常時なのよ」

「うっ…わかったわリツコ」

リツコさんに注意され、おとなしくなるミサトさん。

「ごめんなさいね、シンジ君」

こちらを向いてリツコさんが変わりに謝る。

「いえ、僕は構いませんから」

僕は笑顔で答える。

【流石リツコさんだ…やっぱりこの人もいい人なんだよな…ゲンドウを愛し、最後には裏切られてしまう悲しい人だけど…出来る事ならば悲しまないで欲しいな…でも男女の仲に他人が入っても…あ、シンジはゲンドウの子供だから口出ししても良いのかな?】

「ほぉら見なさいリツコ、シンジ君もああ言ってるじゃない」

僕の言葉を聞いてミサトさんが鬼の首でも取ったかのようにリツコさんに言う。

【反省の無いミサトさんには、ちょっと仕返しをしちゃおうかな】

「そう言えばミサトさんにも言ったじゃないですか、『可愛い』って…忘れちゃったんですか?」

「え?」

僕の言葉にミサトさんが驚きの表情でこちらを向く。

「あら、惚れられたのは貴女だったみたいね」

そんなミサトさんにリツコさんが追撃を加える。

「なっ!?何言ってんのよあんたは!」

【あ、ヤバいかも…ていうかやっぱミサトさん顔赤くないか?本当に照れてんの?!】

「あ、あの…ミサトさん、冗談ですから落ち着いてください」

慌ててフォローに入る。

「え?…そ、そうよね。あはは」

笑って誤魔化すミサトさん。

「リツコさんも変な事言わないで下さいよ…」

リツコさんに軽く抗議する。

【まぁ、言い出したのは僕なんだけど…】

「そうね、今はそんな状況じゃなかったわね…着いたわ」

冷静に言うリツコさんの声と同時に、エレベーターが止まり、扉が開いた。






「では、後を頼む」

そう言ってゲンドウが非常用昇降機で発令所を降りる。

「3年振りの対面か…」

そんなゲンドウを見送り、つぶやく冬月。

「副指令」

その時オペレーターに呼ばれ、冬月が目線を移す。

それと共に赤く染まるモニター。

「目標が、再び移動を始めました」

その報告に振り向き、副指令として指示を出す。

「よし、総員第一種戦闘配置」







『繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意』

「ですって」

アナウンスを聞いてミサトさんが言う。

「これは一大事ね」

ミサトさんの言葉にリツコさんがおどけて言う。

【そんな全然一大事っぽくない様子で言われても説得力ないですよ…大体リツコさんはこの非常時に悠長に着替えとかしたじゃないですか…まぁ、あまり時間は掛からなかったですけど…】

斜めに移動するオープンなエレベータのような物に乗りながら、僕は内心突っ込んだ。

「で、初号機はどうなの?」

ミサトさんがリツコさんに尋ねる。

「B型装備のまま現在冷却中」

【B型装備…確か何かの本にブレードの略だって書いてあったような…プログナイフはもう装備済みなのかな?】

「それホントに動くのぉ? まだ一度も動いた事無いんでしょう?」

「起動確率は0.000000001%。O9(オーナイン)システムとは、よく言ったものだわ」

【ていうか確率で表すのって意味が無いんじゃないかな…シンジか綾波じゃなきゃ動かないんだし…あ、あれって凍結中の零号機か?…手しか見えないや】

奥に見える巨大な青い手を見てそんな事を思う。

【…青? 零号機ってこの時は黄色くなかったっけ?】

そんな僕には構わず話を続ける2人。

「それって、『動かない』って事?」

からかうように言うミサトさんに、こちらも軽い口調で答えるリツコさん。

「あら失礼ね、ゼロではなくってよ?」

「数字の上ではね…ま、どの道「動きませんでした」じゃもう済まされないわ」

最後の部分は、深刻な表情でミサトさんは言った。






ザパーン ザバーン

ピンク色をした冷却水の上をホバークラフトに乗って進む僕達。

【あ、初号機の腕だ…やっぱり実物はかなり大きいな】

船のエンジンを止めて、先に降りたリツコさんが僕達に言う。

「ついて来て」

そう言って階段を上るリツコさん。

「あ、はい」

「シンジ君、足元気をつけてね」

クラフトを降りようとする僕にミサトさんが声をかける。

「ありがとうございます」

そう言ってミサトさんに微笑み、僕は慎重に降りる。

【ミサトさん…こんなに優しい人が、これからあんな茶番を…】

そんな事を考えながら階段を上り、入った部屋は照明が点いていなかった。

【これも演出の一つなんだよな…】

念のため片目を瞑りながらそんな事を考える。

【映画館とかでこうすると暗くても見えるんだよね】

ウィーン ガシャン

音と共に唯一の光源だった入り口が閉まり、辺りに闇が広がる。

閉じていた目を開き辺りの様子を伺う。

【あ、リツコさんが白衣のポケットからリモコンを出した…】

カチ ガション

リツコさんがリモコンのスイッチを押すと同時に証明が点く。

それと同時に僕のすぐ前に現れる巨大な顔…というより目。

【エヴァ初号機…】

「さっきもらった冊子には載ってませんでしたね、何ですかコレは?」

その巨大さにちょっと驚きつつも僕は静かに言う。

きっと予想を裏切ったであろう僕の様子に、リツコさんが一瞬、怪訝な表情をするも説明を始める。

「…人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機…建造は極秘裏に行われた、我々人類の最後の切り札よ」

【普段は有線だし、単独じゃ5分しか稼動できないのに、究極で汎用とはね…でも、現実世界ではこんな科学技術は存在してなかったんだから、凄いんだろうな…そう言えばこの後は…】

ふと流れを思い出して上を見上げる。

初号機の後ろに強化ガラス越しに見えるシンジの父の姿。

【碇ゲンドウ…やっぱり父さんって呼ばないと不味いよな…】

『久しぶりだな』

僕と目が合ったゲンドウがマイクを通して言う。

「そうだね、久しぶり。元気そうで良かったよ…『父さん』」

笑顔で答える。

【シンジにとっては心を通わすのは難しい父親でも…僕にはただのアニメのキャラクターだからな…それに、彼もまたただ愛する妻を求めただけの悲しい人…】

『……出撃』

一瞬、目を見開いて驚いたような顔をするが、『父さん』はすぐに不敵に笑ってそうつぶやく。

「出撃?! 零号機は凍結中でしょう?」

父さんの言葉にミサトさんが突然叫ぶ。

【始まった…でも僕はこんなもの見たくない…少なくともミサトさんは僕を乗せる事に良心の呵責を覚えているはずだし…例え結果的に相反する気持ちの内、『復讐』の方が勝つって分かっていても…】

そう考える僕の横でチラリと初号機を見たミサトさんが続ける。

「まさか?!…初号機を使うつもりなの?」

「他に道はないわ」

冷静に事実を告げるリツコさん。

「ちょっと…レイはまだ動かせないでしょ?」

ミサトさんが今度は僕の方をチラリと見る。

「パイロットがいないわよ」

「さっき届いたわ」

【届いたって…僕は宅急便じゃないんだから…】

「マジなの?」

ミサトさんの言葉にリツコさんが僕の方を向いて呼ぶ。

「碇シンジ君?」

「…はい」

「あなたが乗るのよ」

リツコさんが告げる。

それを聞いたミサトさんが一応抗議する。

「でも、綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ? 今来たばかりのこの子には、とても無理よ」

「座っていればいいわ、それ以上は望みません」

【確かにエヴァのシステムは思考で動かすものだから座ってるだけでも出来るけど…なんて都合のいい言い方なんだろう…】

「しかし!」

「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためにはわずかでもエヴァとシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか、方法は無いわ」

【確かネットのSSでもよく突っ込まれてたけど…だったらもっと早く呼べばよかったのに…これもシンジを寄り代とした補完計画の一部ってことだろうけど…その前に負けたら終わりなんだからさ】

「分かっている筈よ、葛城一尉」

「……そうね」

リツコさんのその言葉を聞いて、ようやくミサトさんが決心をしたみたいだ。

でも、その言葉はとても辛そうに聞こえた。

「父さん…なぜ僕なの?」

父さんを見上げて尋ねる。

『他の人間には無理だからな』

「じゃあ、さっきミサトさんが言った、綾波レイって子は?」

そう続ける僕に横からリツコさんが答える。

「レイは今、重症を負って入院しているわ」

「…そうですか、他にパイロットはいないんですか?」

今度はリツコさんに聞く。

「もう一人のパイロットがいるのはドイツよ、これから呼び出しても間に合わないわ」

「……」

【結局、断っても乗せられるだろうし…僕が乗らないと綾波が…なら】

「わ『乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!』」

「わかった」と言おうとした僕の言葉を、ゲンドウがあのセリフで遮った。

【…アニメじゃありえない事だな…】

改めてコレが現実だと思い知らされた。

グラッ

そんな時、まるで地震のように周りが揺れる。

【これはっ!】

『奴め、ここに気づいたか!』

“父さん”がマイク越しにつぶやく。

『第1層、第8番装甲板、損壊』

被害の状況をアナウンスが報告する。

「シンジ君、時間が無いわ」

それを聞いて僕をせかすリツコさん。

ミサトさんも屈んで僕に言う。

「シンジ君、だめよ逃げちゃ…お父さんから、誰よりも自分から!」

そう言うミサトさんに、僕は微笑みながら小声でささやく。

「僕は逃げませんよ」

「え?」

僕の言葉に驚くミサトさんから父さんに視線を移す。

「父さん…乗るよ」

力強く、意思を込めて宣言する。

【例え起動しなくても、それはその時に考えればいい事だ】

遠くて良くは分からなかったけど…そんな僕を見て、父さんがニヤリと笑ったように見えた。






ザバーー

初号機の安全装置の排水溝から冷却水が排水される。

『冷却終了』

『ケイジ内、全てドッキング位置』

「了解、停止信号プラグ、排出終了」

マイク越しの連絡を黒髪でショートカットの女性オペレーターが受ける。

言わずと知れた伊吹マヤだ。

後ろではリツコとミサトが様子を見ている。

『了解、エントリープラグ挿入』

『脊髄連動プログラムを開放、接続準備』

アナウンスと共に初号機の首元にエントリープラグが入れられる。

『プラグ固定、終了』

『第一次接続、開始』


ヘッドセットをつけてエントリープラグ内のインテリアに座らされた僕。

アナウンスと共にプラグの壁の色が様々に変わる。

『エントリープラグ、注水』

【この声は…伊吹マヤ? って!】

「うわっ!」

そんな事を考えた瞬間、足元からL.C.Lが迫る。

【これは知っててもビビるって…え〜と、飲むんじゃなくて肺に取り込むんだったよな】

そう考えている間にL.C.Lが首元まで来る。

取り合えず目を閉じ、息を止める。まぁ、シンジみたいに頬を膨らませたりはしないけど。

『大丈夫、肺がL.C.Lで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます」

そのリツコさんの説明とほぼ同時に息を吐き出し、L.C.Lを肺に入れる。

【何だこの変な感じ…】

『すぐに慣れるわ』

【慣れたくないですよ…それにL.C.Lってリリスの体液じゃん…うぇ】

「気持ち悪っ」

思わず言葉に出る。

『我慢なさい! 男の子でしょう!』

予想はしていたがミサトさんが僕に怒鳴る。

カチン

「ミサトさん五月蝿いです。男だ女だって差別しないで下さい、ミサトさんも味わいますか?」

相当不機嫌な表情と口調で言う。たぶん今の僕は額に青筋が浮かんでるかもしれない。

『うっ…』

『葛城一尉、邪魔になるから騒がないで』

僕の言葉に黙り込んだミサトさんにリツコさんが注意を加えるのが聞こえる。



『主電源接続』

『全回路、動力伝達…問題なし』

初号機に外部電源が接続され、その報告を聞いたリツコが応答をする。

『了解』



『第二次コンタクトに入ります』

「ん?」

マヤさんの声が聞こえ、今までオレンジに染まっていたL.C.Lが無色になり、まるで液体の中に入っているのが分からないくらいになる。

『A10神経接続、異常なし』

『L.C.L電荷率は正常』

マヤさんとリツコさんの声が聞こえる中、プラグ内にいくつもの光の粒子が飛び交う。

『思考形態は、日本語を基礎原則としてフィックス』

様々に変化していたプラグの壁がモニターとして起動する。

【凄い…これは、L.C.Lに映像を投影しているのか?】

『初期コンタクト、全て問題なし』

『双方向回線、開きます』

【どうなんだ? シンクロ出来てるのか?…頼む、動いてくれ!】

そう願いつつ、僕はマヤさんの報告を待つ。

『…シンクロ率、41.3%』

【よしっ!いける】

『凄いわね』

その数値にリツコさんが驚きの声を漏らす。

【ていうか聞こえてますよ…】


「ハーモニクス、全て正常値…暴走、ありません」

「いけるわ」

マヤの報告に、後ろに立つミサトを振り返り、リツコが言う。

それを聞いて頷くミサト。

「発進、準備!」

ミサトの号令に整備班がさらに手順を進める。

『発進準備』

『第一ロックボルト外せ』

『解除を確認』

『アンビリカルブリッジ、移動開始』

アナウンスと共に外される拘束具。

『第二ロックボルト外せ』

『第一拘束具、除去』

『同じく、第二拘束具を、除去』

『1番から15番までの安全装置を解除』

『解除確認。現在初号機の状況はフリー』

『内部電源、充電完了』

『外部電源接続、異常なし』

「了解、エヴァ初号機、射出口へ」

整備班の報告を聞き、マヤが指示を出す。

射出口へ移動する初号機、そして閉まっていた隔壁が順に開く。

「進路クリア、オールグリーン」

「発進準備完了」

マヤの報告を聞き、発進の準備完了を宣言するリツコの声にミサトが応じる。

「了解!」

ミサトが後方に座るゲンドウを振り向き、最終確認する。

「構いませんね?」

「勿論だ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来は無い」

いつものポーズで言うゲンドウに、隣に立つ冬月が尋ねる。

「碇…本当にこれでいいんだな?」

その問いに口元をニヤリと上げるゲンドウ。


『発進!』

【ぐっ!】

ミサトさんの声と同時に体に急激なGがかかる。

長い通路を物凄いスピードで上へ向かっていく。

【くっ、こんなに速いのか…遊園地のアトラクションなんかより、ずっと強力だ…】

予想以上の慣性に体が圧迫される。

ガシャーン

「うあ」

突然の急停止に一瞬、体が軽くなったように感じる。

どうやら初号機が地上に到着したみたいだ。

【あれ?】

しかし、目の前に映るモニターには原作では存在したサキエルの姿がない。

【これって…そうか、僕がシンジより早く乗ったから少しタイムラグがあるのか!…これなら…】





一方、発令所ではゲンドウ、冬月、ミサト、リツコ、マヤをはじめとするオペレーターが、夜の第3新東京市にたたずむ初号機を見守っている。

そんな中、ミサトがシンジを想う。



(シンジ君…死なないでよ)


























つづく